関西大学法学部教授 栗田 隆

民事執行法概説「債権執行 2」の注


注1 最判平成5年3月30日民集47巻4号3300頁は、物上代位権に基づく差押え前に仮差押えがなされていた事案であるが、先行差押えが強制執行としての差押えの場合でも、配当要求の終期までに物上代位のための差押え(法193条2項)が必要となろう。

注2 第三債務者は、供託前になされた配当要求の通告書が供託後・事情届出前に送達された場合には、その通告書も事情届出書に記載しなければならない。その通告書が事情届出後に送達された場合には、事情届出の追加として、その事実を届け出るべきである。その追加届出がなくても、事情届出を受けた執行裁判所が配当要求のあったことを知りうる場合には、配当要求債権者にも配当がなされる。最初の差押え後に執行債務者が住所を移転したため、最初の差押えをした執行裁判所と第2の差押えをした執行裁判所とが異なる場合に、配当要求が第2の執行裁判所になされ、その通告書が第三債務者による事情届出後に送達され、第三債務者が追加届出をしなかったときには、配当等を行う最初の執行裁判所が配当要求のあったことを認識できないまま支払委託がなされることが生じ得よう。そうした事態を防ぐために、第2の執行裁判所の書記官が第三債務者の陳述(法147条)から第1の差押えを知った場合には(規則135条1項4号参照)、配当要求のあったことを第1の執行裁判所に通知すべきである。